tomshannon’s diary

69歳の爺です、ストレス解消に素直に記したいと・・・

雑草野郎

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先日はてなブログから「一年前にこんな記事を書かれています・・・読み直してみませんか?」はっきりしないがこの様なメールが来ていた

そうだな昔の思い出は意識しないでも頭を過ぎる事があるが、一年前だと大きな出来事が無いと思いださないなぁ

一年前か・・・これと言った出来事は無かったがこんな事を思い出した。

 

春の気配がここそこにやって来ている、そんなある日黄色のマイカーで山へ向かって走った、息子殿から戴いたママチャリだ。

街並みを通り過ぎ小さな村に入った、先ほどまで挨拶する事が無かったが、ここまで来るとすれ違う人が会釈をしてくれる。

髭を生やし汚いホームレス顔負けの服を着て怪しい雰囲気の自分にも挨拶をしてくれる。

 

少し走ると山道に入った、体力が付いてこなくなり自転車を押して山道を進んだ、でも上り坂で押していてもきつい・・・

老体に鞭打って先に進むと小さな川が有り静かな絵にかいたような風景に出会った。

 

少し大きめの岩が有ったので腰を掛け、この自然には似合わないタバコに火をつけたが何となく申し訳なく思いすぐさま消した。

周囲の景色を楽しんでいると歌が聞こえて来た

小鳥が歌い周囲の木々が葉を風に震わせ合唱している、それに合わせるようにせせらぎの音が伴奏をしている。

    心地良い・・・

歌を聞きながら周囲を見回していると川の対岸にも岩が有りその周囲に雑草が生えている、後ろでは木々が合唱している。

 

ふと視線を感じた・・・

あれ?と思いその方を見ていると岩の根元に生えているの雑草と目が合った・・・

ん? 何か言いたいのかな?

  「何か話でもする?」と聞いてみた、すると雑草が語りだした

・・・・・・・・・・・

俺はね、ここで生まれてさ、ずっとここで生きているんだよ

でも毎日退屈はしていないよ

晴れの日は、お日様の日差しで川面がキラキラ輝いて綺麗なんだ

雨の日には雨粒が川面に落ちてさ、丸い波を作り幾重にも広がって行くんだよ、日本画を見ている様なんだ

風の日には川面に波が立って波が我先に先へ進むんだ、競争しているんだろうね

 

・・・俺の名前を知っている人は居ないだろうな・・・

赤やピンクの鮮やかな花を咲かせられないんだ、でも地味だけど白い花なら咲かせることが出来るよ

綺麗な色の花を咲かせることが出来たなら人生 ん?「草生」かな まあいいや

違う人生だったかもしれないね・・・

 

たまに思うんだあの川面に浮かんで流されてみたいって

大きな川に出て、その先の大きな海に行ってみたいと

海に出れば異国の地にたどり着けるだろ

そうすれば、赤やピンクの花を咲かすことが出来るかも知れないってね

 

でもここから離れる事が出来ないんだよ・・・

何故って、皆それぞれ役目ってやつが有ってさ

役目の無い奴って居ないんだよね、小鳥も木々も皆頑張って役目を果たしているんだよ

だから俺もここで生きて行くんだ、役目を果たす為にね・・・

 

そうだろ爺さん!

                    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

雑草の野郎!この爺に説教しているのか、それとも自分自身に言い聞かせているのか聞いてみると

      「好きなように解釈しな・・・」

なにか棘が刺さった様な気持ちで帰って来た・・・

 

こんな事を思い出した数日後、あの雑草に会いたくなりあの山へ行ってみる事にした。

自転車に跨りやっとの思いであの川原についた

 

すると 

 雑草 「よう! 爺さん」

 自分 「おぉ 久しぶりだね」

 雑草 「生きていたのかw」

 自分 「相変わらずだよ お前さんはどうなんだ?」

 雑草 「おぅ 俺も変わらねえよ」

そんな何気ない話をしていると雑草の野郎が「・・・うしろ・・・」って言うんで振り返ると、自分より少し歳上の爺さんと婆さんが立っている。

近くの村の人と思い「こんにちは」と挨拶したのだが、微笑んでいるだけで返事が無く俺が座っている岩をじっと見つめている

立ち上がり「どうぞ 座ってください」と言うと二人はす~と近寄り岩に座った。

雑草野郎の方を見ながら「良い天気ですね お散歩ですか?」と言いながら二人の方を見ると居ない・・・

ん?っと思い周囲を見ると、二人は林の方へ入って行った。

 

  雑草 「よぉ爺さん 爺さんも見えるんか?」

  自分 「あぁ 小さい時からなぁ・・・お前も見えるんだな・・・」

  雑草 「なんとなくだがな・・・」

  自分 「何かあったんだな?」

  雑草 「あぁ 去年爺さんがここに来たろ」

  自分 「あぁ お前の話を聞きにきたなぁ」

  雑草 「あの少し前にこの上にある滝に身を投げたんだよ あの二人・・・」

  自分 「そうなんだ・・・」

  雑草 「たまに あの二人がその岩に座ってため息をついているんだよ」

  自分 「そうか 石によっては霊にとって特別なものだからなぁ」

 

ここで自分は気が付いた、去年雑草野郎がなぜあの話をしたのか

  自分 「よう お前勘違いをしたろ」

  雑草 「そのようだなw」

  自分 「自分は自殺なんかしないよ」

 

雑草野郎はあの二人の事が有ったので、自分が自殺をする為にここへ来たと思いあの話をしてくれた様だ。

 

滝を見たくなった自分はもう少し上まで足を延ばしてみた

 

そこには小さな滝が有り、あの二人が宿るには良い所の様に思えた

滝を見ていると、水しぶきの中に二人の微笑む姿が有った

手を合わせ安らかに過ごせることをお祈りし、自分は帰路についた。

 

帰りは下りで、去年の棘も取れた事も有り自転車を漕ぐ足取りも軽い

頬をなでる風もまだ冷たいが心地よい・・・

 

自転車を漕ぎながら・・・

自分もまだ役目が有るのかなぁ・・・もう精一杯生きて来たけどなぁ・・・