日本昔話 「子宝地蔵」「嫁地蔵」
「むか~し昔」 と言っても二十数年前の話ですがw
長野県に白樺湖が有り、その横を大門街道と言う街道が走る
その街道を北へ上ると脇道にそれる小さな四つ角があり、その一角に小さなお地蔵さんがあったそうじゃ
お地蔵さんは古くて苔で蒸していて忘れられていた
そのお地蔵さんの奥には小さな村がありそこに和紙職人の平吉どんが母親と二人で住んでいた
田舎の事でこの村も嫁不足で平吉どんは四十にもなると言うのに一人もんじゃった、母親ももう六十を過ぎており近所からは婆さんと呼ばれていて何かと嫁の話をするそうだ
大門街道を白樺湖の方へ少し戻ると民宿があり、昼間は喫茶店で益子焼や地元の物産も販売してる
そこに「かおり」と言う女性が働いていた、彼女は大阪出身のお嬢さんでおおらかな性格ですがナイーブな面も少しあるだようだ
ゆくゆくは民宿を経営する予定で、ネットで「従業員募集」を見つけこの民宿の経営を経験しに来たそうだ
平吉どんは仕事の合間や休みの日にちょくちょくこの店に来ていて、かおりを見染めたそうじゃ
それからは毎日店に来て猛アタックしたそうで、その甲斐もあってめでたく結婚したんじゃ
平吉どんの母親はそれはそれは喜んで孫の顔を早く見たいと思っていたんだが、一年経ってもそんな話も無い
婆 「平吉! 孫はまだ出来んかのぉ?」
平 「あぁ まだだのぉ」
婆 「そうか 待ち遠しいの・・・」
平 「すまんのぉ」
そんな会話を聞いてかおりも気にしていた
ある日の夜、婆さんの枕元にお地蔵さんが現れたそうじゃ
あくる朝婆さんは平吉どんにお地蔵さんの話をし「お地蔵さん お地蔵さん」と呟いていると
平 「お地蔵さん・・・ そうだ街道沿いに有ったんじゃぁ?」
婆 「あぁ そう言えば道の角に有ったのう」
平 「見にいって見るか」
三人は街道沿いへ出て草の間を探していると、苔に覆われたお地蔵さんを見つけたそうだ
それから婆さんは、雨の日も雪の日も草をむしり苔を剥がしお供え物を供え「子宝に恵まれますように」とお祈りする毎日でした
見違えるようになったお地蔵さんは、雨上がりには雨粒が陽射しで輝きお地蔵さんが輝いているように見えたそうじゃ
半年ほど経ったある日、婆さんが疲れのせいか風邪をひきお地蔵さんにお参りに行けなかった
婆さんが行けない日はかおりが代わりに行っていたが、婆さんは「すまねぇ すまねぇ」 「ご利益はまだかのう」と呟いていた
数日後風邪も落ち着いたので、お地蔵さんにお参りに行った
婆 「すまんかったのう」
地蔵 「いやいや なんのなんの」
婆 「うん?なんか言ったかのぅ?」
地蔵 「体を大事にして貰わなくてはなぁ」
婆 「あれっ 地蔵様が喋った! ありがたや ありがたや」
地蔵 「体を大事にして 孫の面倒を見て貰わないといけないからのぉ」
婆 「はぁ?地蔵様、孫の顔は見れるのかのう?」
地蔵 「ははは そろそろかもな」
婆 「ほんとかいのぅ!」
数日後、婆さんは半ば諦めていたのだがお地蔵さんの言葉でまた元気が出て畑仕事に励んでいると
かおり 「婆さん 出来た様じゃ」
婆 「うん?」
かおり 「子が出来た様じゃ」
平吉 「婆さん 待たせたのう」
婆さんは手を止めて目頭を拭いていた
それから順調に月日が流れ愛でたく元気な男の子が生まれた
村では「子宝地蔵」と言われ、周囲の村では「都会から嫁が来たのは お地蔵様のお陰じゃ」と「嫁地蔵」と言われたそうじゃ
お地蔵さんには祠が建てられ、周囲の村からもお参りに来てお供え物が今も絶えないそうじゃ
めでたし めでたし・・・
お地蔵さんをシャーペン一本で書いてみましたw