「白い百合」
昨日はリビングの床をテブールや椅子などすべてベランダへ出し四つん這いになって隅々まで拭き掃除をした、その時思ったのが自分はやはり「一人が好きなんだ」と言う事。
「孤独」と言う言葉さえ楽しいように思える、そんなことを考えながら思い出した話がある。
どこで読んだかいつ読んだか覚えていない、そんな話を思い出しながらまとめてみた。
「白い百合」
面倒くせえんだよ!
関わりたくないんだよ!
人と関わりたくなくて、いつもこんな事を心の中で叫んでいた。
だからと言って引き籠りでは無く、一人で行動するのがただただ好きなだけだった。
解っているんだよ!一人で生きて行くことなんて出来ない事は・・・
特に中学生の時は朝ぎりぎりに教室へ滑り込み、授業が終わると大方の人が帰るのを待って一人で帰っていた。
高校や大学時代は行動範囲も広がったせいか少しマシになっていた様に思う。
だが大学卒業近くになり就活を始めると、この性格でこの考えに合う企業が無い・・・
仕方なく百歩譲って出来るだけ個人で出来る仕事を選び、3社・4社と受けたのだが内定が貰えない。
百歩譲っても無ければ二百歩譲る?と思っていると携帯に採用通知が飛び込んできた!
情報処理の仕事、PCで情報を処理し工程を組んでプログラムする、任されたプログラムを一人でこなしていく仕事だ
春になり研修が始まったのだが、「これって必要なの?」と思える事ばかりだ
「面倒くせぇ~」と小さく呟くと、横にいた同期の野郎が聞こえたのか「えっ、大丈夫?」て言ってきた
「関わりたくないんだよ!」と彼の顔を見て、声を出さずに叫んだよ。
なんだかんだと研修も終わり配属先も決まり、今日が初出社。
自分が所属する部署は50人程度で、フロアーはさすがIT企業!スキッとしたオシャレな感じだ、
机は横に5列縦に10台 50台が同じ方向を向いて並べてある その後ろに一回り大きな机が鎮座している、部署のTOPのものだろう。
この部署に新入社員は自分も入れ7人いた、新入社員は後ろに集められていて自分の席は一番後ろの右端で入口に一番近い席だ、後ろにTOPの机が有る・・・
その日は朝から順調に仕事をこなし、もう少しで完成と言うところまで来ていたので「残業でもするか」・・・
背筋を伸ばしながらフロアーを見回すと前の方に先輩が一人、前の列の左側に同期の女性が一人いた。
少しすると先輩が「お疲れ! お先に失礼するよ」と帰って行った、自分は声に出さず会釈だけして彼の後姿を見送った。
さて仕上げに入るかと思いながら前列の彼女を見ると、彼女の肩が震えているように見えた。
斜め後ろから見ているので俯いて居る横顔が少し見えるのだが泣いているように見える・・・
んっ?泣いている・・・
自 「どうしたの?」少し大きな声で声を掛けた、自分らしくないよなぁ~
彼女 「・・・・・」
なんだよ、気を使ったのに返事もないのかよと思い少しイラッとしたので、彼女の席まで行き
自 「どうしたんだよ、泣いてんじゃん」
彼女 「いいの・・・」
自 「いいのじゃぁねえよ」
少し強く言うと
彼女 「うん、無くしたの・・・」
自 「何を無くしたんだよ?」
彼女 「もういいの・・・」
あ~めんどくせぇ~と思いながら
自 「探してやるよ、何を無くしたんだよ?」
彼女 「探してももう無いんだもん・・・」
あ~関わらなければ良かった
自 「なんなんだよ!」言葉が少しきつくなった
彼女 「・・・愛」
自 「あい、なにそれ?」
彼女 「愛・・・」
あ~めんどいなぁ~
自 「愛ってLOVEの事かよ?」
彼女 「うん、でも・・・もういいの」
自 「もういいのばっかりで何言ってるのか解んねぇよ」
彼女 「新しいものを見つけた様だし・・・」
自 「何言ってるか解んねぇよ、もう遅いから帰ろうか?」
関わりたくねぇ~って言ってる自分が、自分から関わって行ってるwww
PCの電源を落とし帰る支度をし彼女をみると、まだ座っている
自 「さあ、帰るど」と彼女の腕を掴んだ、冷た!とっさに掴んだ腕を放した
彼女 「有り難う・・・」と言って自分の手を両手で握ってきた
冷たい・・・自分の体まで冷えそうだ・・・
気を取り直して一緒に会社を後にし「お疲れさん~」と言って一人駅に向かった、自分から関わるなんて自分らくないや・・・
これって、愛なんて考えた事もない自分が色気づいたかな~苦笑いものだ
あくる朝いつも通りぎりぎりに出社
フロアーに入るといつもと雰囲気が違っていた・・・空気が重たい・・・二・三人 四・五人でひそひそ立ち話をしている
そこへフロアーのTOPが入って来て「もう知っていると思いますが○○さんが昨夜亡くなられました、八時ごろ自殺されたそうです・・・ご冥福をお祈りし・・・・・」
へっ!八時と言えば自分とここに居た・・・○○さんて名前も初めて知った・・・
彼女の席を見ると白い百合の花が活けてある・・・
TOPがパンパンと手を叩いて仕事に入るよう促したが自分は理解できずに百合の花を見つめていると、百合の花が霞んできた。
すると彼女がふわっと現れこちらを見て笑顔で会釈をした・・・そして自分の所へ来てまた手を両手で握って「ありがとう」っと言って消えた!何が何だかわからないまま、寒気がし、気分が悪くなりトイレに駆け込んだが落ちつかない、仕方がないので昨日のプログラムを仕上げ早退させてもらった。
次の朝、気分が優れないが何とか出社した
んっ?今日も何か雰囲気が違う昨日と同じようにひそひそ話している・・・重たい空気・・・
取りあえず自分の席に座ったその時目に入った! え~?あ~?なに~?言葉にならない!
白い百合の花が活けてある・・・自分の机に・・・
・・・そういう事か・・・